道端に見られる花の種類が増えてきました。オオイヌノフグリやヒメオドリコソウ、ショカツサイ、セイヨウタンポポもまだまだ見られますが、ナガミヒナゲシ、ノゲシ、オニタビラコの花もあちらこちらで見られるようになりました。
玉川上水の柵の内側に目を向けてみます。3月下旬に咲いていたアズマイチゲやヒメニラの花は、すっかり見られなくなりました。次に出会えるのは来年の春ですね。咲いていたのはほんの1、2週間程度でした。アマナは4月の初旬には花が終わります。小さく可憐な花なので、足元で見つけると嬉しくなります。フデリンドウ、ホタルカズラは、カンゾウなどの葉に埋もれて見えなくなりました。4月上旬に満開を迎えるのはクサボケ、ニリンソウ、イチリンソウです。法面に見事な群落が見られます。ウラシマソウやムサシアブミもひょっこりと出てきました。中旬にはミツバツチグリ、ジシバリが咲きはじめます。
この辺りの玉川上水は幹線道路である五日市街道と並行しているため、観察しているとやや騒がしく感じられますが、柵の中だけはまるで山野のような環境です。春の短い間だけに見られる花を探しながら散歩するのは、宝探しをするようで楽しいですね。
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それぞれの花について
アマナ
日当たりの良い草地や林のふちを好む植物です。控えめで清楚な花が、3月に咲き始め4月の初めには咲き終わります。花の後には緑色の実が見られることもあります。カタクリのように、何年も鱗茎に栄養を蓄えたのちに花を咲かせる植物だそうです。北多摩では絶滅危惧Ⅱ類に分類されます。伐採の影響が今後どのように出てくるのか、気になるところですね。
ニリンソウ
北多摩では準絶滅危惧に指定されています。愛らしい2㎝程度の小さな花をたくさん咲かせます。樹林内の湿潤な環境を好む植物であること、伐採後は日照を好む植物と競合することを考えると、今後伐採されたエリアでの生育状況が変化する可能性が考えられます。
イチリンソウ
落葉広葉樹林や林縁を好む植物です。ニリンソウによく似ていますが、10センチほどの大きな花を咲かせます。今年は昨年一昨年よりも花の数が多く、見事な群生が見られました。
フデリンドウ
山野の日当たりのよいところに生える植物です。4月上旬の、まだ他の草本類の背が低い時期に見られます。凛とした青紫色の花を咲かせます。地元の方々からも愛されているようで、あのあたりにも毎年咲きますよと教えていただきました。図鑑によると5月まで咲いているようですが、この辺りでは4月中旬には草むらに隠れて見えなくなってしまいます。
ホタルカズラ
山野の乾いた草地や林縁を好む植物です。4月上旬に見ることができます。草むらの中でぼんやりとした薄い青紫色の花を咲かせます。フデリンドウと同様に、4月中旬にはカンゾウなどの葉に隠れて見えなくなってしまいました。伐採後に見晴らしがよくなった場所で初めて確認できました。ホタルカズラにとって伐採が好ましいものであるのか、数年後の変化に注目したいです。
ウラシマソウ
4月上旬から中旬にかけて確認することができました。山野の木陰を好む植物です。
ムサシアブミ
ウラシマソウと同様に4月上旬から中旬にかけて確認しました。湿った林内を好む植物です。
クサボケ
名前にクサとついていますが、低木です。朱色のよく目立つ花を付けます。この辺りの玉川上水全域で見られますが、特に伐採された区画②,③では所々で群落が見られます。4月末には花は見られなくなり、ゴルフボールほどの丸い緑色の実を付け始めます。日当たりの良い場所を好むクサボケにとっては樹木の伐採はありがたいものであったかもしれません。
<参考>
レッドデータブック東京 https://tokyo-rdb.metro.tokyo.lg.jp/
山渓ハンディ図鑑1「野に咲く花」増補改訂新版 山と渓谷社 2013年
山渓ハンディ図鑑2「山に咲く花」増補改訂新版 山と渓谷社 2013年
卓上版牧野日本植物図鑑 北隆館 平成29年
玉川上水花マップ春号 玉川上水花マップネットワーク 2019年